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【E CROSS TALK REPORTS vol.19】「ゴールデンサークル理論」を活用した、未来を照らすパーパスのつくり方
こんにちは!
今回は2月27日のワークショップ「【E CROSS TALK vol.19】「ゴールデンサークル理論」を活用した、未来を照らすパーパスのつくり方」の内容を抜粋してお届けします。
みなさんは「ゴールデンサークル理論」をご存知でしょうか?
ゴールデンサークル理論に基づくパーパス策定は、企業ブランディングだけではなく、個人の日々の業務や、就活中の方の就職活動など、さまざまな場面で応用可能なんです。
今回は株式会社ボランチの松重宏和氏に登壇いただき、実際に仕事の中で活用してきた「ゴールデンサークル理論」に基づきながら、将来・未来を照らすようなパーパスのつくり方についてお話しいただきました。
この記事では、90分間のワークショップの内容を一部抜粋して紹介します。
講師プロフィール
松重 宏和(Hirokazu Matsushige)
代表取締役 / Creative Director
Volante.,Inc.1983年北海道岩見沢市生まれ。
2019年「あらゆる”つくる”をアシストする」クリエイティブカンパニー「ボランチ」を設立し、代表取締役社長に就任。クリエイティブディレクターとして、企業や商品、サービスが持つ本質的価値を引き出し、その魅力を世の中に広く伝えるブランディングやプロモーションを数多く手掛ける。受賞歴は、ADFEST金賞、Spikes Asia銀賞、Lions Health銅賞など多数。
また地域創生に関わる中で「地域には熱狂が必要なのではないか」という想いから、2021年に北海道唯一の3人制プロバスケットボールクラブ「HOKKAIDO IWAMIZAWA FU(現:FUz HOKKAIDO.EXE)」を立ち上げ、共同代表に就任。⾃らプロスポーツクラブを所有する、⽇本で唯⼀の「スポーツクリエイティブディレクター」として、スポーツを通じて北海道に熱狂を生み出し、「革命」を起こすべく奮闘中。
ゴールデンサークルとは?
まずは松重さんに登壇いただき、事例の紹介を含めて自己紹介をしていただきました。
私は岩見沢市出身で、2019年に独立して以降、クリエイティブディレクターとして活動しています。私の会社である「株式会社ボランチ」では、コンサルティングからコミュニティの運営、プロスポーツクラブの運営なども行っています。
事例としては「ライオン株式会社 LION Scorp(メディアのネーミングやコンセプトなどのディレクション)」「APRグループ リブランディング」「デンソー リブランディング」「資生堂 WASO イベントプロモーション」などを行ってきました。
今日紹介する「ゴールデンサークル理論」を使い始めたのが「デンソー」のリブランディング事例。ブランドのコアの部分を、ゴールデンサークル理論をもとに社員の方々と一緒に考え、映像などを制作しました。
この事例をきっかけに「もしかするとすでに心の中にある言葉を引き出してあげることが、会社の目指すべき方向が見えることにつながるのでは?」と思うようになったんです。
ゴールデンサークル理論について
「ゴールデンサークル理論」は、サイモン・シネック氏がTEDトークにて「優れたリーダーはどうやってアクションを起こしていくのか」というテーマで話をしたときに提唱した理論です。
簡単にいえば「WHY」「HOW」「WHAT」この3つを中心に考えていく理論。
それぞれ何を指すかというと、
- 「WHY」:ビジョンやミッションともいえる部分のこと。そのブランドが何を実現するために存在するのか、どんなことを信じているのか?
- 「HOW」:「WHY」を実現するために、どういった差異を出していくのか、その人らしい解決法は何か?
- 「WHAT」:「HOW」を実現するための具体的な活動内容は何か?
これらを考えていくことで、企業のコアの部分が明確になります。
たとえばAppleの場合を考えてみましょう。
- Appleの「WHY」:一人ひとりが持つクリエイティビティを信じ、支え、応援するために存在する
- Appleの「HOW」:それを実現するのは「美しいデザイン」「シンプルな操作性」「よりユーザーフレンドリーであること」
- Appleの「WHAT」:この世の中で最も偉大で優れたコンピューターをAppleは提供します。
このようになります。
ここで重要なのが、考える順番。「WHY」→「HOW」→「WHAT」の順番で物事を考えているからこそ、独自性があるゴールデンサークルになるんです。
ところが、ほとんどの企業は「WHAT」、つまり「何をつくるか」「何を売るか」から考えてしまいがち。そうなると他者との違いが見えにくく、結果的に支持されない商品やサービスを生み出してしまいます。
「WHY」からはじまった場合、感情に訴えるようなブランド・プロダクトになります。
ちなみに「WHY」→「HOW」→「WHAT」の考える順番は、脳の動きと似ていると考えている学者もいるそうです。それだけ考えやすく、理解がしやすい順番なんですね。
もう一つ、Googleの場合でも考えてみましょう。
もし「WHAT」ベースで考えると、先ほど例に出したAppleと変わらないはずですよね。ところがGoogleの「WHY」は「世界中の情報を体系化して、誰もがアクセスできるようにする」というところにあります。つまり、Appleとは目指すゴールが全く違うんです。
この部分を見誤ってしまうと、会社としての軸がずれるだけではなく、競合設定などがずれたものになってしまいます。いかに「WHY」が重要なのかが分かるのではないでしょうか。
私はさらに、「WHO」を追加した「ゴールデンサークル・改」で考えるようにしています!
先ほどのゴールデンサークル理論の考え方に加えて「これを実現するために、つながるべきはどこにいるどんな人なのか?」を考えます。「WHO」を加えることで、より差別化がしやすくなるんです。
会社の指標として考えるものとして「VISION」「MISSION」「VALUE」というものもあるのをご存知でしょうか。
よく比較をされるのですが「VISION」「MISSION」「VALUE」よりもゴールデンサークルの方がインナー寄りです。ゴールデンサークルは、外に出すものでなくていいと考えています。
それに対して「VISION」「MISSION」「VALUE」は、対外的に出すことも多い言葉。企業のWebサイトなどでも掲げているのをよく見かけると思います。
個人のパーパスと企業のパーパス
働いていく上で、個人の信念や想いと企業の信念や想いがなるべく重なった方がハッピーだと思いませんか?
この重なりが、大きければ大きいほど共感できるはずですよね。
もし自分が仕事でやるべきことが会社のミッションとほぼ一緒だったとしたら、毎日の仕事も楽しくなります。会社の仕事を自分ごと化しやすくなるんです。またお互いにミスマッチが起きにくくなります。
ちなみに私個人のゴールデンサークルは、このようになっています。
- 「WHY」:愛と尊敬に満ちた世界の実現(誰かとパートナーシップを組むからこそ、お互いにリスペクトがないと一緒にいいものがつくれない)
- 「HOW」:好きな人と、好きなことを、好きなように。
- 「WHAT」:最適な遊び方のデザイン
- 「WHO」:愛と尊敬を感じられる人
特に、尊敬できる人というのが私にとっては重要。この仕事は、自分一人では完成しないものが多く、必ずほかのクリエイティブの方が入ります。そこで一緒にものをつくる人が尊敬できない・してくれない人だと、いいものをつくることはできないですよね。
また、私の会社であるボランチのゴールデンサークルは、このようになっています。
- 「WHY」:より創造的な社会を実現する。
- 「HOW」:あらゆる「つくる」をアシストする。
- 「WHAT」(会社が提供できる価値):企画とプロデュース。
- 「WHO」(ターゲット):クリエイティブを愛する人。
ボランチは私の会社なので、2つのパーパスには相関性があります。でも会社の場合だと個人とは逆になっている部分もありますね。
個人のパーパスと企業のパーパスが似ている、もしくは一緒の方が仕事も楽しめます!
ボランチが手掛けた事例:APRグループリブランディング
ここからは、実際にゴールデンサークル理論を使った事例として「APRグループ」のリブランディングについてお話ししていきます。
まず前提として40年以上社長を勤めた父から、息子さんへ代替わりがありました。そのタイミングでAPRグループのパーパスを考え、リブランディングをしたいとのご依頼です。
そこで行ったのが、パーパスを考えるワークショップ。今まで勤めてきた方だけではなく若手を含めて開催しました。
ワークショップではさまざまな質問から「APRグループ」について考えていきます。
たとえば「APRグループを人に例えるとどんな人?」という質問に対し、社員の皆さんからは「40代の男性」「破天荒だけど誠実」「カラオケが好き」「ちょいワル」というような回答がありました。
また「先進的か伝統的か」というようなキーワードを事前に用意しておき、認識を擦り合わせていくんです。そうすると、やっていくうちに「これはちょっと違うよね」というような共通認識が見つかります。
さらに話していくうちに「APRグループって、ワクワクしてるよね」というような新たなキーワードが出てくるんです。
ここで出てきたキーワードや共通の認識をもとに、ゴールデンサークルを使って「WHY」「HOW」「WHAT」「WHO」を策定。そこから「VISION」「MISSION」「VALUE」にも落とし込みました。
ワークショップでできた言葉が元になっているので、会社のパーパスを自分ごと化ができるようになるんです。
ゴールデンサークル作成ワークショップ
ここからはワークショップとして「自分だけのゴールデンサークル」をつくってみることになりました。
アドバイスですが、WHYからつくるのは意外と難しいんです。わからない場合はWHATで自分が提供できる価値から考えてWHY⇄HOW⇄WHATを行き来するのがいいかもしれません。
WHATからつくるだけでは「そのWHYって本当に思っている?」というものになりがちなので、何度も行ったり来たり考えて精査をしていくのがいいですよ!
悩みながら書いている人や、紙にびっしり書き込んでいる様子も!みなさん真剣に考えていました。
ワークの後は数人が代表して発表することに。
経営者の方による発表もありました!
単に自分の価値を提供するだけではなく、何かと掛け合わせることで達成できることは多くあります。たとえばクリエイティブ×スポーツなどは、私も現在取り組んでいることの一つです。
掛け合わせるものがあると、巻き込める人が増えます。巻き込む人が増えれば、やりたいことのゴールに近づきやすくなったり、社会に対していい影響を与えられるようになっていくんです。つまり、いい未来に近づいていきます!
今日のまとめ
私は、ゴールデンサークルの「WHY」の部分は、未来を指し示すコンパスだと考えています。
心の声に向き合うことが重要で、心の声に従って生きていく方が精神的に豊かに生きていけるはず。さらにそれを外に出していくことで、世の中や周りの人も豊かに生きていけるのではないでしょうか。
ゴールデンサークル理論などを使って心の声と向き合い、ブラッシュアップしていきましょう!
□まとめ
「ゴールデンサークル理論」や「パーパス」と聞くと、企業だけが考えるもののように難しく捉えてしまうかも。ところが松重さんのお話からもわかるように、実は自分の心や生活を豊かにするための指針となるような、重要な考え方!
個人と企業のパーパスを考えることで、より仕事を自分ごと化できたり、逆に自分にあった企業を見つけやすくなるきっかけになったりするはずです。
自分の暮らしを豊かにするためにも知っておくべき大切な理論を、実践的に学べた90分間でした。
E CROSS PARKでは、今後もさまざまなテーマのワークショップを開催予定です。
ぜひみなさまのご参加をお待ちしております!
次回のレポートもお楽しみに!