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WORKSHOP

【E CROSS TALK REPORTS vol.14】異分野を掛け合わす 越境するクリエイティブの可能性

こんにちは!
今回は11月28日のワークショップ「【E CROSS TALK vol.14】異分野を掛け合わす 越境するクリエイティブの可能性」の内容を抜粋してお届けします。

今回は株式会社アマナの杉山 諒氏、新村 卓宏氏を招いて、クリエイティブの仕事の広さや面白さを感じていただくセミナーを開催しました。
「株式会社アマナ」といえばフォトストックの提供をはじめ、あらゆるデザインやクリエイティブを行っている企業。さまざまな技術・分野を掛け合わせることで新たなクリエイティブを創出し、グローバルに展開をしています。
そんなクリエイティブの第一線で活躍するお二方から、みなさんの活動のヒントを見出すためのワークショップを行っていただきました!

お話いただいた内容を抜粋して紹介します。

講師プロフィール

杉山 諒

杉山 諒(Ryo Sugiyama)

プロジェクトデザイナー

株式会社アマナ

企業のブランディングや、新規事業開発など、デザインやアートの思考を用いて、企業のさまざまなプロジェクトを担当。
テクノロジーを軸に、イノベーションの可能性を拡張するデジタルクリエイティブラボラトリー「FIGLAB」にも所属。
また社会のクリエイティブ人材を増やすことを目的とした研修プログラム「amanaCreativeCamp」を開発 / 担当。

新村 卓宏

新村 卓宏(Takahiro Niimura)

FIGLABテクニカルディレクター/マネジャー

株式会社アマナ

制作会社にてウェブ制作の経験を積み、2006年に株式会社アマナ入社。Flash制作、ディレクターを経て、FIGLABの立ち上げに参画。
現在はFIGLABのリーダーとして、企業/ブランドのプロモーションコンテンツプランニング、テクニカルディレクションを幅広く手掛ける。


会社紹介&Creative × Technology + Q&A

 

まずは杉山さん・新村さんのそれぞれから自己紹介をしていただきました。その後杉山さんから「株式会社アマナ」について、改めてご説明いただくことに。

 

杉山さん

株式会社アマナは、社長がフォトグラファーということからはじまった会社です。そのため写真の撮影はもちろん、CGや映像、さらにはWebサイトやイベントなどにまで領域を広げ、企業ブランディングやマーケティングにも携わっています。

現在社内には、グラフィックデザイナーやカメラマン、レタッチャー、プログラマーなどのクリエイターが400名ほど在籍しています。会社として「建築以外はなんでもできる!」のが特徴ですね。

また仕事のご依頼は広告代理店からいただくこともありますし、企業から直接依頼が来ることもあります。

 

 

 

拡張するデザインとは?

杉山氏

ここから少しイントロとして「拡張するデザイン」について話をしていきます。

現在は誌面デザイン・WebデザインからUI/UXデザイン、コンセプトデザインまで「デザインの領域」が広がっています。媒体の制約がなく上流の工程が広がってきているんです。さらに、見た目・色などの表層デザインだけではなく、骨格・構造・戦略などを決めるのもデザイン。デザインが携わる領域が拡張しています。

デザインの領域拡張に伴い、人材の深さ・幅はT型→H型に移動しつつあるんです。領域を問わずにデザインができる人を「越境人材」と呼んでいて、重宝されるようになってきています。

 

またビジネスに求められる3つの要素として【ビジネス領域】【テクノロジー領域】【クリエイティブ領域】を掛け合わせると、新しいイノベーションが生まれると言われていたりします。理系・文系・芸術系いずれも必要とされているんじゃないか?と考えられているんです。

その背景にあるのは、ウクライナのことや気象問題など、一筋縄では行かない問題が多いことが挙げられます。一つのスキル・得意分野を持っているだけでは、問題解決が難しいんです。

 

つまり「何かと何かを掛け合わせることで、問題解決や可能性の発掘につなげる!」これが今日のワークショップのテーマでもあります。

そこでまずは「クリエイティブ×テクノロジー」という側面で、新村さんから話してもらいます。

 

Experience Technology Unit FIGでの制作事例

ここからは新村さん(愛称はジミーさん!)に登壇いただき、実例をもとにしつつ「クリエイティブ×テクノロジー」についてお話しいただきました!

 

ジミーさん

株式会社アマナの社内には「Experience Technology Unit FIG」というチームがあります。「テクノロジーと表現力で体験を深化していく」をテーマに掲げています。

もともと写真から始まった会社ということもあり2Dのもの(印刷、ディスプレイなど)が多かったのですが「もう少し手触り感のある、体験できるものを作っていこう!」ということでできたのが「FIG」というチームです。

 

いま注目されつつあるのが「フィジタル」という言葉。これは「フィジカル」と「デジタル」の造語です。私たちはこの「リアル」と「デジタル」のハイブリットによって新しい体験を作っていくことをミッションとしています。

 

制作チームはプロジェクトとクリエイティブ2つの職種に分かれていて、クライアントと協力し展示会やショールームでのコンテンツ制作をメインに行っています。

制作実績としては、企業様のエントランスのコンテンツ制作やアーティストと共同してアート作品の制作、さらにWebやアプリなどの多くの方が触れるものに至るまで、数多くに携わっています。

 

ここからはいくつか事例を紹介していただきました! どの事例もテクノロジーを駆使して実際の体験を生み出したもので、中には国際的なプロジェクトの例などもご紹介いただきました。

 

 

Creative × Technology部分でのQ&A

ここで一旦、クリエイティブ×テクノロジーに関しての質疑応答を行いました。

 

Q 体験を生み出すために、技術をどのように具体的な作品にしていますか?

クライアントによって違います。クライアントは具体的な作りたいものを持っているケースもあれば、まったくないケースもあるんです。要望をしっかりヒアリングをし、ディスカッションをしてから提案をしていきます。

また、今まで培ってきた経験値から「あのセンサーを使えば、こんなことができるよね」という話をします。一般的に使われるものの機能と、それを使えばこんなことできるよねという共通認識を持ちながら具体的に詰めていきます。

 

Q 新しい作品を作るための、情報のキャッチアップはどのようにしていますか?

インスタレーションに興味のあるメンバーが多く、X(旧Twitter)などを中心に情報を自主的に収集しています。特に海外の事例やメディアアーティストの作品などで「こんな変態みたいなことしているぞ!」という事例をキャッチアップしていますね(笑)。

 

Q お客様満足度や費用対効果などを測っていますか?

このような作品展示の場合、確かに効果測定は難しいところ。クライアントが来場者アンケートなどで効果を測っていることもありますが、このような制作物はブランディングに近いためKPIなどを取っていないことも多いですよ。

 


Creative × 人材育成、Creative × 共創 + Q&A

ここからは第二部として、杉山さんからお話しいただきました。

 

杉山氏

私は現在「アマナクリエイティブキャンプ」という人材育成プログラムの講師もしています。

きっかけは、あるとき企業の方から「パワーポイントデザインやドキュメントデザインなどを教えて欲しい」と要望があったこと。最初はお断りしていたのですが、何度もご依頼をいただいたんです。そこでデザインの思考や可能性、さらには僕らの考えている想いも併せて、思考とスキルの両方を提供するようになりました。

アマナは、さまざまなスペシャリストがいる会社。そのナレッジを「人材育成」「競争力を高めるクリエイティブ人材の育成プログラム」として体系化を進めている最中です!

現在は、具体的な何か事業を行っている方々に向けて「人材育成」として提供しています。

今回は体系化したプログラムの中でも一番依頼が多い「なぜいまビジネスパーソンのクリエイティビティが求められるのか」について紹介します。

 

なぜいまビジネスパーソンのクリエイティビティが求められるのか?

杉山さん

まずは、みなさんにいくつか質問をしてみたいと思います。

 

質問1「ビジネスパーソンにとって大事な能力何だと思いますか?」

参加者からは「コミュニケーション能力」「実行力」などの回答がありました。

 

山口周・著『なぜ世界のエリートは美意識を鍛えるのか?』という、「デザイン思考」の走りになった本があるのですが、その中ではニーズの変化と多様性について書かれています。

かつては情報の選択肢が少なく「車が欲しい」「ブランド物が欲しい」などニーズがわかりやすかった。そのため求められるものを機械的に生産するのが主だったんです。

しかし現在はインターネットの普及に伴い、情報の選択肢が多くなりました。情報が増えると一人ひとりのニーズが多様化。企業としても次の一歩をどう踏み出そうか、正解があるような無いような状況になっています。

一人ひとりが「これが問題なんじゃないか?」と問いを見出し、「自分はこうだと思う」と考えることが大事なのではないか?ということが書かれています。

 

ずっとビジネスパーソンには「フレームワーク」や「論理的思考」「批判的思考」などが必要だと考えられてきました。もちろんそれも大事なのですが、そこに加えて今は「デザイン」「アート」「直感」「美意識」などをいかに見出していくかが大事な時代になっているんじゃないかな?と思っています。

 

質問2「創造性やクリエイティビティとはなにか?」

参加者からは「ゼロからイチを作り出す力」「自分の頭の中にあることを形にする」「自分の中の感性を形にする」などの回答がありました。

 

絶対的な答えがないので、みなさんが答えたものも正解だと思います。一つ、ビジネススクール「カオスパイロット」の学長の言葉を紹介します。

『クリエイティビティは人々の中にあり、常識に囚われることなく、自分の気持ちに素直に向き合えば、自然と創造的になれる。』

つまり、すでにみなさんのなかにクリエイティビティはあり、自分の気持ちに素直になることが創造的になる第一歩と言われています。

それでは、すでにクリエイティビティを持っているのに、それを発揮できないのはなぜなのでしょうか?ここで3つ目の質問です。

 

質問3「創造性の敵とは?」

参加者からは「フレームができていること」「ルールや決まりごと」などの回答がありました。

 

現在「同質化する時代」と言われています。「インスピレーションがグローバル化する」「ネットワーク化している」とも言われているのですが、ネットからさまざまな情報が日々入っていることは、必然的に日本全体も世界も同質化に向かっていると考えられます。

たとえば“ホラー映画っぽい”ポスターや、“動物との感動ものっぽい”ポスターは、世界どこでも共通して「それっぽい」=同質化したクリエイティブになってきているんです。

 

「同調性や同質性という毒」という考え方も。成長と進化の過程で、世の中に溶け込むために「みんなと同じことをやる」「同じことを考える」ことを覚えてしまうんです。それは反面、創造性を忘れてしまっていることではないでしょうか。

私たちは、同じことを繰り返し行うことで「模倣していく力」を持っています。それとは違い、クリエイティブは「カオス」や「常に新しいことをする」ということが創造力を保つ秘訣なんじゃないかと話しています。

つまり「慣れは創造力の最大の敵」!

 

最後にもう一つ質問です。

質問4「人間がAIよりも優れていることはなにか?」

参加者からは「相手の気持ちを読み取る」「相手によって対応を変える」「高度・より深い思考」などの回答がありました。

 

人とデジタルの役割を0〜10に分けると

  • 0-1 Humans
  • 1-9 Machines/AI
  • 10 Humans

と言われています。

つまり何もないところから生み出すことは人間が行い、AIが得意とする大量に作る・効率化などの間の部分は任せてしまってもいいのでは?と考えられているんです。そして最後の部分、感性と美意識を使って選び抜いていくことや、磨き上げる領域は、人間の方が優れているのではないかとされています。

未知(=データがない)のことにおいてゼロをイチにする領域や決断力においては、今人間の方が優れていると思います。

そこで重要なのが、もっと想像する「妄想思考」を人間はより鍛えること。AIができる論理的思考では解決できない創造性は、今後より重要になっていくと思います。

そこで今日は「妄想思考」をみなさんとやってみようと思います!

 


ワークショップ「想いが先、手段は後。」

ここからは創造的になるためのワークショップを行いました!

 

杉山さん

それではここから「想いが先、手段は後。」というワークショップを行います!

カンタンに言えば「想いがあって、それをどうやって実行するか考えるのが大事だよね」ということを短い時間で考えてみるワークショップです。

そこで、まずはみなさんのクリエイティブパワーを引き上げるために、みなさん靴を左右反対に履いてください!先ほども紹介しましたが「慣れは創造力の最大の敵」。「違和感」を感じながらワークショップを進めてみましょう。

 

ここからは3人1チームで取り組みました。

 

杉山さん

それではここから「みなさんが今抱えている想い」を書いて欲しいなと思っています。

世の中に対する課題や「こうなったらいいな」「これがなくなったらいいのに」という想いを、どんなものでもいいので紙に書いてみてください。

 

書いた想いはチーム内で共有し、中でも共感する想いを選出。決めた想いを実現する方法をチームで話し合いました。

 

最終的にチームごとに発表を行いました。みなさんの考えた内容を抜粋すると……

「教育について考えていると、子どもの気持ちを忘れてしまう」→「大人を子どもにしよう!」たとえば子ども目線を体感できるVRなどで危ないものをチェックできるように

「飛行機代をもっと安くしたい!」→「人件費を下げるためにCAさんや搭乗手続きも無人に」「乗客が少ない便は直前にセールを行う」「コーヒーなどのサービスは廃止」などの仕組みを考えた

などのユニークな意見が飛び出しました!

 

杉山さん

一人ひとり素直に想いを書くワークショップは、今までにない発想が生まれたのではないでしょうか。実は自分のなかにも「創造性」があることを、このワークショップを通して信じてもらえると嬉しいです!

本日はありがとうございました!

 


□まとめ

クリエイティブと何かを掛け合わせることで、新しい発想やビジネスが生まれる可能性を秘めていることが、実例やワークタイムを通して知ることができた今回。

デザインやクリエイティブの範囲はどんどん拡張していて、さらにニーズの多様化で一人ひとりが考える力が職種関係なく問われていると認識を新たにできました。

これからの時代を生き抜くためにも必要なクリエイティビティを、実践的に体験できるワークショップでした!

 

E CROSS PARKでは、今後もさまざまなテーマのワークショップを開催予定です。

ぜひみなさまのご参加をお待ちしております!

次回のレポートもお楽しみに!