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WORKSHOP

【E CROSS TALK REPORTS vol.16】メンバー全員でプロジェクトを動かす!
クリエイター・マネージャーが考えるプロジェクトマネジメント

こんにちは!
今回は11月30日のワークショップ「【E CROSS TALK vol.16】メンバー全員でプロジェクトを動かす! クリエイター・マネージャーが考えるプロジェクトマネジメント」の内容を抜粋してお届けします。

今回は「プロジェクトマネジメント」に焦点を当てたセミナーを開催。
東京を中心にPMとして活躍する5名を招き、クリエイターとマネージャーそれぞれの視点から「メンバー全員で動かすプロジェクト」について伝えていただきました。
さまざまなプロジェクトに関わってきた経験から講義していただいた、濃密な120分のレポートです!

お話いただいた内容を抜粋して紹介します。

講師プロフィール

今村 雄一郎

今村 雄一郎(Yuichiro Imamura)

今村統研

多摩美術大学 情報デザイン学科 アートコース修了。制作プロダクションにて14年勤務。その中でテクニカルディレクターからディレクターへとキャリアチェンジし、2019年にフリーのディレクター・プロジェクトマネージャーとして独立。近年はミクストメディアによるアート制作活動も行う。

船橋 友久

船橋 友久(Tomohisa Funahashi)

株式会社コパイロツト

広告制作会社、PR/ブランドエージェンシーを経て、現在はデジタルマーケティング領域におけるプロジェクトマネジメント業務に特化した株式会社コパイロツトに所属。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進支援、企業内の部署業務フロー改善、新規事業開発、大規模ウェブサイト構築のプロデューサー/プロジェクトマネージャーとして従事。現代美術ギャラリー「Takuro Someya Contemporary Art」の運営サポートも行い、作家・ギャラリーとクライアントとの新しい接点づくりも行なっている。

村田 健介

村田 健介(Kensuke Murata)

Design Teacher

Monstarlab, Inc.

和歌山大学経済学部出身。グラフィックデザイナーの経歴を経て、2019年よりモンスター・アカデミアのデザイン講師業に従事。フリーランスでグラフィックWeb・UIUX領域のデザインを横断。民間向けのデザイン教育だけでなく、人材派遣・保険・IT・自治体など、様々な組織での研修をこなし、のベ400人ほどにデザイン思考およびUIUXの研修を行う。

神子 愛香

神子 愛香(Aika Kamiko)

Team Lead Designer

Monstarlab, Inc.

東京工芸大学メディアアート表現学科インタラクティブ専攻卒業。大学卒業後、東京のデザイン制作会社にて、グラフィックデザイナーとして4年勤務。ブランディングの観点を踏まえた戦略立案を軸に、 CI ・広告・カタログ・パッケージ・ウェブサイトのデザインの他、映像・プロダクト・建築まで、多様なチャネルを横断しながらデザイナーとしての経験を積む。モンスターラボ入社後はフィリピン拠点にて日本人とフィリピン人デザイナーのマネジメントを行いながら、教育事業のモンスター・アカデミアでは企業ごとの課題に応じたデザイン領域の育成支援や組織組成における伴走支援等を行う。

吉田 耕

吉田 耕(Ko Yoshida)

プロジェクトマネージャー

mount inc.

就職難の折に中村勇吾氏など著名な制作者を排出しているウェブ制作プロダクションに勤務。以降プロジェクトマネージャーを名乗る。ウェブのみならず飲食事業、服飾事業、プロ野球など様々なジャンル、業務形態でプロジェクトマネジメントを経験。制作会社勤務の傍らプライベートワーク「黒い花屋」やプロジェクトの悩みをスポットで解決するサービス「toorun」の運営も行っている。


情報設計者(IA)の視点から、心がけていること

まずはファシリテーターとしてmount inc.の吉田さんが登壇しました。

吉田氏

「プロジェクトマネジメント」というと話が難しそうに感じるかもしれません。ですが、平たくいえば「Webディレクション」なども含まれます。

今日の内容はWebに限らずの話ではありますが、自分が作るということは自分にも責任が発生しますよね。もし関わるプロジェクト全体がうまくいかないと、自分のやったことも残念な結果になってしまいます。

そこで今日は、プロジェクトを上手に進めていくためのアイディアをお伝えしていけたらいいなと思っています。

 

まずは今村統研の今村さんからお話いただきます。今村さんはWeb制作の「フォーデジット」という会社に勤めていた方。会社のメンバーがどんどん増えて、PMの幅も広がっていった経験もされています。

 

プロジェクトをメンバー全員で動かすために

ここからは今村統研の今村さんに登壇いただき「情報設計者(IA)の視点から、心がけていること」をテーマにお話しいただきました。

今村氏

実は私と、今日登壇している吉田さん、船橋さんで「toorun」という組織を作っています。

プロジェクトマネージャーはいろんなことに活用できるスキル・職能なはずなのに、なかなかキャリアが見えなかったり、ひたすら頑張って進行しなきゃいけないと見られたりするんですよね。そんなPMの立場を変えていきたい!という想いで集まっています。

 

吉田氏

PMをやっていると、自分の仕事しか経験が増えていかないんですよ。そこで、PM同士で集まって情報共有をしています。

 

今村氏

今日の全体テーマとして「プロジェクトマネージャーが仕事を動かす」だけではなく、いろんな人たちが「プロジェクトマネジメント」を意識したり知識を持ったりしながら関わることで、より良いプロジェクトになっていくんじゃないかというところをお伝えしたいと思っています。

私は、特に「情報設計」という視点でお話しをしていきますね。

今日のポイントとしては2つ。

1つが「プロジェクトマネジメントはプロジェクトをコントロールする」。これは全体を俯瞰しながら、一番情報が集まってる場所でコントロールするのが「プロジェクトマネジメント」ということです。

もう1つが「プロジェクトは全員で動かす」ということ。そのまま、プロジェクトはみんなで動かすことが大事ということです!

 

情報設計者は「ステークホルダーの把握」「情報収集・管理」が大事

今村氏

私はテクニカルディレクターやPM、ディレクターなどを兼任したあと、4年前に独立しました。

いろいろな会社の人が足りない部分に入って手伝うことが多く、今日登壇しているみなさんの会社ともお仕事をした経験があります。仕事によって自分の役割が違うので、頭がこんがらがってしまうこともありますよ(笑)。

 

ここから、情報設計の目線でお話しをしていきます。

まず「PM」「ディレクター」「情報設計」の役割の違いを理解しましょう。

このように会社やプロジェクトによって、役職名ややることはバラバラです。ただプロジェクトの前半部分、プロジェクトの全体像をちゃんと検討する段階で関わることが多いですね。

プロジェクトの工程でいうと、PMは「与件整理→プロジェクト計画→リサーチ・分析→企画・案件定義→デザイン→開発→リリース」の全工程に関わり、推進していく役割を担っています。特に計画の段階からしっかり入るのが特徴です。

つまりPMはプロジェクトのすべてを掌握している立場とも言えます。把握しておくことが重要な仕事の一つです!

これが情報設計であれば、プロジェクトの骨格となる方針(設計図)のようなものを作っていくのがメインの仕事です。

 

制作プロセスの中で、留意しておくべきポイントが2つあります。

  • ステークホルダーの把握・アプローチ
  • 情報収集と整備と管理

プロジェクトは期間を問わず、さまざまな情報や成果物が発生してきます。これらをいかに管理して動かしていくかを考えてみましょう。

 

ステークホルダーの把握・アプローチ

「ステークホルダー」とは、プロジェクトに関わるすべての人のこと。ステークホルダーをしっかりと把握した上で、どのようにアプローチを行い、計画を立てるかは大事なポイントです。

たとえば、提案時に急に知らない人が出てくる……なんてことがありませんか?このような事態が起きないようにするため、関係者全員の洗い出し・確認を情報設計者側でも行います。

「誰が承認を行うのか?」「誰が売る人なのか?」などを細かく把握すると、仕事の流れが見えてくるんです。そうすることでヒアリングの際にが適任者から話を聞けたり「この人がいないと話が動かない」というキーマンの把握をしたりすることにもつながります。

また長期のプロジェクトの場合、メンバーが変わることもありますよね。そのようなケースでも、後から入ってきた人が把握できないという事態を防げます。

 

そのために行っているのが、連絡網を作ること!これを「ステークホルダーシート」なんて言ったりもします。またステークホルダーが出揃ったら「誰が・何に関わるのかを」明確にする「RACIチャート」を作るのも有効です。

 

情報収集と整備

情報設計もPMも、特にプロジェクトの序盤にひたすら情報を集めていって整理していくのは大事な役割です。

計画段階から、計画の情報やリサーチ・取材などの情報は集まってきます。これらをきちんと整理するのが重要。この作業を怠ると、後の工程で参考にしにくくなってしまいます。

実際に制作がスタートしてからも、新しい情報や新たな要望などが出てきますよね。これらも順次アップデートしていきます。これは「変更管理」と呼んでいます。会議の記録などもなるべく残していくと「なぜこの話になったんだっけ?」ということや、クライアントの意図がわからなくなることがなくなります。

情報を正しく管理するために、特にプロジェクトの前半は、PM・ディレクターなどの役職同士の連携が不可欠です!

 

さらに細かな部分ですが、担当者にしか伝わらない言葉をそれ以外の人がわかるような言葉に通訳したり、共通で使えるツールなどを選んだりすることも仕事のうち。そのほかワイヤーフレームやプロジェクト計画書、システム仕様書などの構築も行います。

特に「誰が決定権を持っているのか?」を把握するのが大事です。

「QCD」(品質・コスト・納期)のどれを重視するのかも確認しておきましょう。状況に合わせて「何を重視したらいいのか」を柔軟に変更できるといいですね。

 

まとめ

プロジェクトをより良く・より円滑に進めるためには、情報設計とPMの連携は不可欠です!PM以外の仕事の人も、PMの仕事を知ることで仕事が進めやすくなると思います。

 

吉田氏

「全員でやる」ということが重要ですよね。特に最初は、メンバーでアサインできる人はアサインして「商売としてやっているのだから」すべての工程を知っておくことは基本だと思います。

 

 


デザイン設計者(UI/UX)の視点から、心がけていること

ここからはMonstarlabの神子さん、村田さんにご登壇いただき、デザイナー視点でプロジェクトマネジメントの大切さについてお話をいただきました。

神子氏

簡単に弊社の紹介から行います。Monstarlabは、世界19の国と地域のタレントを活用し、デジタルコンサルティング事業・プロダクト事業を展開しています。

 

デジタルを強みに、クライアントのビジネスを成功に導くお手伝いをしています。企業やフェーズ、規模感によって課題などが違うため、その課題それぞれに応じて「どんなサービスを提案するのか」を考え、伴走支援を行なっています。

 

ビジョンは「多様性を活かし、テクノロジーで世界を変える」。

特に村田さんと私はフィリピンを拠点に、デザインチームのマネジメントと「モンスターアカデミア」という教育事業に携わっています。

 

お客さんの課題を解決する流れとしては【ビジネス】【デザイン】【テクノロジー】の3領域を越境しながら、課題をしっかり理解していきます。

また「そもそも課題ってなんだろう?」「その課題は本当に正しいのか?」という問いからリサーチを行うことも。クライアントの持っているコアな価値を理解した上で、どんなビジネスサービスがいいのかまでを一緒に考えています。

 

事例として「シェイクシャック」のブランド価値向上に関するプロジェクトをご紹介いただきました。

フェーズ単位でやり方が全然違うのが特徴です。フェーズは大きく分けて【インキュベーションステージ】【アダプテーションステージ】【デベロップメントステージ】の3つがあります。

  • インキュベーションステージ:新たにビジネスを作るにあたりビジネスを定義する
  • アダプテーションステージ:企業が持つ価値と市場が求める価値をどういったサービスに落とし込んでいくのか
  • デベロップメントステージ:ユーザーが使いやすいものにデザイン・開発者も一緒に構築していく

サービスやプロダクトを作り、作ったものが本当に世の中に受け入れられるのか・必要とされるのかを検証するのですが、そのタイミングでデザイナーが入ります。また、作ったものが世の中にフィットするようにグロースしていく「グロースフェーズ」にも関わっています。

 

プロジェクトにおけるデザイナーの動き方

神子氏

ここから実際に今まで私達が行ってきたプロジェクトをもとに、デザイナーってどう動いていくのかを紹介します。特に「リリースした後にどうやって多くの人に使ってもらえるのか」「サービスを成長させていく」というデベロップメントステージにおいてのデザイナーの働き方についてをお伝えしていきますね。

本日伝えたいのが「デザイナーって想像以上にコミュ力が大事」ということ!

 

ここで神子さんからは事例を紹介していただきながら「クライアントの要望を、会話の中からキャッチアップしていったこと」、そして「いかにチームで共有し提案に落としこんていったか」などをご紹介いただきました。

 

神子氏

ここまでの話を4つのポイントとしてまとめました。

1.デザイナーはコミュ力が大事!

ここで言う「コミュ力」とは、能動的に情報をとりにいく主体的なコミュニケーション力のこと。ワイヤーフレーム通りに表層だけを整えるのではなく、クライアントやユーザーが何を求めてるのか、潜在的な情報やニーズを積極的に理解するためには、対話が欠かせません。

 

2.チームで共通理解・ゴールの認識合わせを行うための継続的な対話は重要

みんなでゴールを目指すために、密度の濃いコミュニケーションが不可欠です!

 

3.答えを見つけるためのアクションを諦めない

案件は、クライアントも答えを持っていないようなものが多くあります。提案したデザインが正解かどうかより、それを正解にするために論理的な提案をしていきましょう!

 

4.抽象と具体を行き来しながら思考を精緻化して、チームで認識をさせるための語彙力を持つ

クライアントの要求がだいぶ抽象的なことも多くあります。「それって具体的に言うとどういうこと?」と問い、抽象と具体を行き来しながら考えてそれを言葉にしていくのが重要。

さらにそれをチーム内で認識を合わせることも大切です。そのためには日本語力が鍵!デザイナー自身が発言する機会もあるため、言葉を知っておくってのはすごく大事だと思います。

 

 

UXリサーチのプロセスを取り入れたプロジェクト進行

ここからは村田さんが登壇し「UXリサーチのプロセスを取り入れたプロジェクト進行」というテーマでお話しいただきました。

村田氏

ここからは、デザイナーがプロジェクト進行する上で実際に取り入れてる手法を紹介します。

そもそもUXとは「ユーザー体験」のこと。ユーザーが本質的に求めているものを知っておかないと、ただ「きれい」「かわいい」デザインで終わってしまいます。ユーザー体験をリサーチすることで、プロジェクトを良くしていくという考えです。

 

まずプロジェクトを始めるときには、デザイン工数をマップにして持っていきます。「やることの棚卸し」みたいなことをするわけですね。

この「現状の整理」をきちんと行わないと認識のズレが起きたり、プロジェクトにとっての解決案である解決策やアイディアがずれてしまいます。これらが起きないようにするためにも「UXリサーチ」を行うんです。

 

UXリサーチを行う方法は「インタビュー」です!

ですがユーザーは答えを知らないので、ただ聞くだけではダメ。インタビュー後に、必ず分析を行わなくてはいけません。(詳しくは翌日のワークショップにて!)

正直、アイディアやサービスの設計は調査しなくても作れます。ですがUXリサーチによって解像度をガンガン上げていけるんです。

 

私は「デザイン思考」や「UXデザインワークショップ」のファシリテーションをよくしているのですが、コンセプトを作る工程は一緒。その工程をみなさんに紹介したいなと思っています。

 

プロジェクトをタイムリーで課題発見・改善していく

制作の途中の段階で、ある程度作っていても振り返ってどんどん直していきます。「できておしまい」ではなくて、できたときにこそユーザビリティテストなどによって課題を見つけていく。良かったところ・悪かったところの検証を随時行なっていくんです。

 

課題発見とアイディエーションを促すファシリテーション

プロジェクトの目的がズレてしまうと、最適なものが作れません。みんなでアイディエーションを最適に作りましょう!

ところがアイディエーションを邪魔する罠が4つあります。

自分自身のバイアス

アイデアを一番邪魔するのは、自分なんです。自分自身は、いちユーザーでしかありません。より深掘りして「もしかして自分って違うかも?」という方が、自己バイアスに左右されていない良い状態だと思います!

 

質問力

正しい本質を引き出すためには、いい質問が不可欠です。特に自分がターゲットではないと、わからないことばかりですよね。わからないならいい質問でリサーチをして解像度を上げましょう!

質問力を高めるためには「なぜを繰り返す」「そもそも」を繰り返して掘り下げます。掘り下げると、回答者も「なんでなんだろう?」という、本人が気づいていないことまで認識できるようになるはずです。

 

折衷案

よくあるのが、持ち寄ったアイデアの中間案や折衷案を採用してしまうこと。これによって中途半端なアイデアになってしまったりライバルとの差別化ができなくなったりします。簡単に言えば無個性になってしまうんです。

 

ぶつかり合うことへの恐怖心

チーム内でバチバチ・ギスギスしてしまうことを恐れて、意見を言わなくなってしまうことがありますよね。実はバチバチすることは悪いことではありません。意見を言い合うことで、それぞれの譲れないポイントが見えてくることが多いんです。

「いいものを作るためのいち工程だ」「メンバーで意見を言い合えている証拠」と思い、仕事を嫌にならないようにしましょう。

 

明日は今日話したことに加えて、さらに「UXリサーチがいかに素晴らしいか」みたいな話をするので、こちらもぜひご参加ください!

 

 


プロジェクト管理者(PM)の視点から、心がけていること

ここからはコパイロツトの船橋さんにご登壇いただき、プロジェクト管理者視点で心掛けていることについてお話をいただきました。

船橋氏

「プロジェクトマネジメント」を考えた時に「具体と抽象」がすべてかな、というふうに思っています。プロジェクトの全体像は見えにくいもの。だからこそ視座の上げ下げを心がけるべきだと考えています。

 

私はプロジェクトマネージャーとプロデューサーだけで構成された会社「コパイロツト」に所属しており、プロジェクトリーダーや外部チームと連携して仕事をしています。

事例としてリンナイ株式会社の本社改修や製品開発、株式会社資生堂「マキアージュ」のデジタルプロモーション、トヨタ自動車株式会社のWebサイトのデジタルガイドラインなどに携わりました。これらの事例のような、多くのステークホルダーがいるなかで承認プロセスを検討して進めていく案件に携わることが多いですね。

 

私からは意思決定の環境作りと、推進させるための会議でのファシリテーションについてお伝えします。お話しする内容を聞いて「実業務でトライしてみよう」という気持ちになってくれるとありがたいなと思っています!

 

 

意思決定するための環境作りの考え方

昨今のプロジェクトの状況は、刻一刻と変化して予測しづらいものになっています。

これは弊社なりの考え方なのですが、プロジェクトの進め方として「少人数で小さく繰り返す実験としてのプロジェクト」という考え方や「多様なプロジェクトメンバーの自律的活動を促す」ことを考えて推進していきます。

 

プロジェクト推進者やリーダーは担当期間が長期で、求められてる業務内容が多いなど、カバー範囲が多岐に渡っています。

特に意思決定からアイデア出しなどにも関わるため、かなり多忙……。そこで大事なのが「状況把握をしやすい環境を作る」と「共通認識を作る」ことです。

 

なぜ共通認識を作るのが大事なのでしょうか。

最初はみんな、プロジェクトに対するイメージがバラバラのことが多いですよね。その状態から、活動や対話で徐々に認識を揃えることによって相互理解が進み、メンバー同士の意思が変容していきます。これによって意思決定がしやすくなるんです。

トップダウンの案件など、いきなりプロジェクトの目的を誰かに合わせる考え方もありますが、その場合だと納得感がないまま進むケースが多く見受けられます。

 

では共通認識をどのような場でつくっていけばいいか。チームメンバーが集まって話し合う場の代表的なものが「ミーティング」と「ワークショップ」です。

ミーティングは、定例会議的なサイクルのアプローチ。話題の範囲は多かったり浅かったり多様です。それに対しワークショップは、物事を実行に移すためのものです。話題の範囲は集中して1つのことを深く掘り下げていきます。

ここでお伝えしたいのが、共通認識のためには「ミーティングをうまく活用しよう」ということです!

簡単にお伝えすると、定例会議によって「推進し続ける仕組み」「共通認識を作り続ける仕組み」「定期的に改善し続ける仕組み」をぐるぐる回していく。これらを総括してプロジェクトスプリントと呼んでいます。

 

プロジェクトチームが持つべき要素「プロジェクトストーリー」「メンバーの役割や期待値」

ここからは、プロジェクトチームが持つべき要素について考えてみます。これは大きく分けて「プロジェクトストーリー」と「メンバーの役割や期待値」の2つです。

プロジェクトストーリーは、シンプルなロードマップでOK。ただし細かなタスクやスケジュールというよりも「こうなっていたい」「こういう状態であるべき」などを関わるプロジェクトメンバーが、常に見れるような状態・更新できる状態が望ましいです。認識をそろえ続けるためのものですね。

このプロジェクトストーリーの作り方として、到達地点を見据えながら逆算して考える「バックキャスト」と、今できそうなところから考える「フォアキャスト」とがあります。

 

ストーリーに具体性を持たせる時、アプローチの方法を明確にするのが重要です。

1つが「適応的アプローチ」。これは何が成果・価値なのかが徐々にわかるもの。作り方は固定で、短期間に反復的に行います。もう1つが「予測的アプローチ」。何をどうやって作るかが徐々にわかるもの。つくるものや成果、価値は固定のものに使われます。

制作するものがどちらのアプローチで進めるものなのかを明確にし、みんなで確認しながら進めるといいでしょう。

 

もう1つのプロジェクトチームが持つべき要素として「メンバーの役割とか期待値」が挙げられます。これは関わるメンバーがいかに腹落ちをして、チーム内で自信を持って行動できるようになるかを考えること。

そのためには「どんなメンバーがいるのかを理解する」のが重要です!

たとえば知らないメンバーが入ってきたときに「どういう人が関わっているのか」を知らないままやっていくと、一体感や「何のためにこれをやっているのか」みたいなことが薄れてきてしまいます。

これは今村さんが作っていた「ステークホルダーシート」「RACIチャート」にも繋がる話ですね。

 

プロジェクト推進させるファシリテーション

船橋氏

ここからは「プロジェクトを推進させるファシリテーション」についてお伝えしていきます。そもそもファシリテーションには、2つの役割があります。それが「内面的プロセス」と「外面的プロセス」です。

「内面的プロセス」は、目的達成とかゴール達成のために人の能力を引き出すこと。

「外面的プロセス」は、プロセスや活動を容易にするために、段取りや進行、プログラム、スケジュール、タスク管理などを行うことを指します。いわゆるPMの仕事と認識されていることですね。

ファシリテーションとしては、外面的プロセスが注視されがち。ですが意外と重要なのは内面的プロセス!そのためには、先ほどお伝えしたプロジェクトストーリーや人の役割をはっきりさせるのが大事になってくるんです。

 

個人的には、ファシリテーションの定義をこのように考えています。

  • ゴール達成するために必要な一連の行為が適切に行われる状態を作ること
  • そのために、状況の「複雑性」をコントロールすること

 

会議とは【前提や位置づけを揃える→漏れがないかを確認→議論→終了して次のステップに結びつける】という一連の流れがあります。この会議の中でファシリテーターは「議論すべきアジェンダ作成」「取り組むべきタスク顕在化」「必要な意思決定」「議事録作成」などを行わなければいけません。

これを一人でやるのは、正直大変ですよね。というより、できる人はそうそう多くないと思います。そこで、モデレーター・ファシリテーター・レコーダー・コーディネーターと役割を分担して進めることで、良い会議運営につながっていきます。

 

ちなみに今日紹介したファシリテーションなどの内容は、こちらでも詳しく紹介しています。
リモートワークにおけるファシリテーションの方法論[増補版]_COPILOT

よければこちらもご覧ください!

 


□まとめ

大きなプロジェクトから小さなプロジェクトまで、PMは活躍する場面が多い役割です。

関わる人が多くなればなるほど、実際に誰が何をやるのかを把握し、共通認識を作ることの重要性が高まることがわかりました。

またPMという立場だけではなく、デザイナーや情報設計の立場、そして関わっている全員でプロジェクトマネジメントに携わることで、プロジェクトの質も上がっていくことが、さまざまな視点からの講義によって認識できたのではないでしょうか。

明日からさっそく使える仕組みや考え方も多い、濃密な時間でした!

 

E CROSS PARKでは、今後もさまざまなテーマのワークショップを開催予定です。

ぜひみなさまのご参加をお待ちしております!

次回のレポートもお楽しみに!

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